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2008年2月11日 (月)

コミュニケーション:聞く力

県内の総合学科の中でも、本校の特徴として「プレゼンテーション能力」が取り上げられることが多いが、「聞く力」もさらなり。

■1月27日の朝日新聞の一面の、「入試に国語リスニング 公立校今春8県に拡大」というニュースを読み、「コミュニケーション」担当者と「さもありなん」と納得していた。学習指導要領でも「聞く力」の育成を国語の重要な目標に揚げているが、総合学科として、それを先読みしてカリキュラムを作ってきているからである。このことを書くチャンスを逸していた。


すでに紹介の通り、他校の様々な発表会に積極的に参加して自己研鑽している。その中で、本校の生徒の「聞く力」というものをあらためて感じることが多い。これは、本校が「新しい総合学科」として、意図的に仕組んできたものであり、その成果が形になってきたということである。私は開校年度から賛同してお手伝いをしてきただけで、それ以前にカリキュラムを固めた準備委員の方々の努力の賜物だと考えている。

(1)科目「コミュニケーション」の効果
本校の学校設定科目であり、2年次に必履修科目として設定してある。2月5日の記事で示したが、2年次で「コミュニケーション」を履修した3年次生が、この科目のインタビュー実習報告会(個人発表)のポスターに、次のような独自のコピーを記述している。

  • 聞く・話す・学ぶ
  • 聞くチカラ・話すチカラ
  • 3分間の空白… 限られた時間の中で彼らは どんなことを伝えるのか、 そして、あなたは何を感じるのか…
発表会をこれから体験する2年次生からは、これだけ的を射たコピーは出てこない。

この科目の前半では、「コミュニケーションスキル」と題して、聞く側のことを考えた様々な会話練習やラジオ放送を聞き取って要約を記述するなどのトレーニングを重ねている。2月4日の報告会の記事にある写真からも分かるように、その成果として、人の話を聞く態度が身についてきている。

(2)科目「産業社会と人間」の効果
総合学科が1年次で必履修としている科目。本校では、「社会人講話」の単元では様々な職種の方をお呼びして話を聞く、「事業所見学」の単元で様々な事業所へ足を運んで見学する、「福祉施設訪問」の単元では様々な状況にある人々の生活を知る。これらの体験から、他者に話しかけ、聞く体験を重ね、さらには単元毎に発表会を行って、違う体験をした仲間と体験を交換している。

1年次から「発表活動」を積極的に取り組み、(同じ時に違う体験をした仲間と)体験を共有しあうことが将来設計の財産になっていく。まだ「発表」することには慣れていないだけに緊張は大きいが、聞く立場になったときに話し手の気持ちが分かるようになる時期である。

(3)科目「情報A・情報B」の効果
本校では、「情報科学系列」という名の系列がある。「科学」と名がつくだけに、アルゴリズムやネットワークなどの教育にも重心を置いた科目配置をしている。ところが、理系の生徒は受験科目の単位数が多いので、理想的に選択科目を取ることができない。そのため必然的に「情報B」の選択を置いている。

普段は「情報A」と「情報B」の生徒は別々に授業を行っているが、産業社会の「事業所見学」の単元に合わせて、一緒に授業を行う時期がある。各自が選んだ事業所について下調べしてしおりを作る。見学後は、学んできたことをプレゼンテーションし、情報を共有する。「産業社会と人間」の科目では、行った事業所ごとのグループ発表だが、情報A・Bでは、個人発表を行う。この期間は敢て一緒に授業を行うという学校側の姿勢を、生徒は重く感じている。このことにより、「情報」も「産業社会と人間」のどちらの科目でも、発表内容が底上げされ、合わせて聞く態度も育ってきている。

この科目連携の仕組みを開校年度からつくり、改善して来た。現在の上級生はその影響を大きく受けて育ってきているのが分かる。

(4)インターンシップ・ジョブシャドウ・ボランティア活動の効果
インターンシップ活動は、1年次生と2年次生を中心に、単位認定を前提として、夏休みに4日ほどの就業体験と事前・事後指導を行っている。民間企業出身の校長の指導のもと、本校独自で開発してきた受け入れ先は誇れる資産だ。これも、行きっぱなしではなく、事後の報告会で体験を共有し合って価値を高める。
ジョブシャドウは、高校としては国内で第1号の実践事例でもある。毎年多くの生徒が、日揮株式会社のご協力で、社員に一日付き添いながら仕事の様子と社会人の心構えを学んでくる。ここでも聞く力の養成が行われる。裏話になるが、大学の推薦入試では、このジョブシャドウの体験をアピールしてくる生徒が多い。
ボランティア活動では、保育施設や養護施設に行くものが多い。報告会こそ行っていないが、学校外に出て多くの人と触れ合う中でコミュニケーション能力が大事なことを学んでくる。

以上のように、総合学科生として同時期に異なる体験をした仲間で「体験の共有」をする過程で、プレゼン能力と聞く力を育てている。今回の記事のタイトルのように、「聞く力」があることで、発表会が盛り上がり、総合学科としての学習活動への求心力となってきている。つまり、横浜清陵総合高校の伝統として根付きはじめている。


■やっと、横浜清陵総合高校設立の理念が柱として見えてきたところ。
これらの背景の中で、2年次の「コミュニケーション」で鍛えられているのが本校の特徴。3年次の「課題研究(探求)」では、生徒がインタビューなどのフィールドワークに行く力を持っていることを、指導教員が良く理解しておくことが大切である。他校よりも忙しい思いをする生徒に、卒業時の満足感、卒業後の満足感を持ってもらうために。

今、本校で必要なことは、それぞれの年次で、生徒がどのような体験をしてどのような力(特に「聞く力」)を身につけているかを、全ての教員が理解することである。

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