「エンボス加工のアルゴリズム」と「情報デザイン」
5日の研修会で紹介する予定だったネタ。情報BでもOKです。
定時制の前任校では社会人聴講生を受け入れながら実施していた情報A。PeintiamII(200MHz)メモリ16MBのWindows95マシンだったが、全日制と共有なので片身の狭い思いをしながら使っていた。
画像処理検定2級の勉強をしていた当時、高価なPhotoshopなど手がでなかった。得た知識を試したかったので、UNIXから移植のフリーソフトGIMPを使っていた。小さな画像なら結構動いた。
平成14年の情報Aで行った「エンボス加工」と「昼の景色を夜景に変える」というネタは今でも「図形と画像の処理」の授業で使っている。
エンボス加工の手順とそのアルゴリズムは簡単だ。
- (1)画像の複製
- 写真をPhotoshopに読み込み、背景レイヤーをコピーする。
- (2)上のレイヤーの階調を反転
- 色調補正のメニューにある。RGB情報のビット列が全て反転し、その色は元の色の物理補色になる。
- (3)上のレイヤーの不透明度を下げる
- だんだん下のレイヤーが透けて見えてくると同時に色は無彩色になってくる。
- (4)不透明度50%でストップ
- この時、上下のレイヤーの色情報が重なり合って、一面がグレーになる。反転したビット列との合計は11111・・・111で白を表すが、平均なので値はその半分、色は50%グレーになる。RGBそれぞれのビット列が右に論理シフトして、0111・・0111・・0111・・になる。
- (5)上のレイヤーを数ピクセルだけ移動する
- 色合いが急に変わるエッジの部分は、ずれたことで50%グレーと異なった色になる。色が単調だった部分は50%グレーに近い色のまま。これがエンボス化された画像になる。
というように、コンピュータが裏で行っているビット列操作を考察しながら教えることができる。もちろん、エンボス加工というフィルターも用意されており、最適なアルゴリズムを用いているだろう。
とにかく、画像処理ソフトに用意されている各種のフィルターは、アルゴリズムのバッチ処理なのである。画像処理も画像描画もコンピュータの内部ではビット列操作であり、そのアルゴリズムを考えることは正に「情報デザイン」であろう。
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コメント
ビット列の反転と補色は同じことだったんですね。これだけでも、2進数の減法で使えそうです。ありがとうございました。
投稿: hohhoh | 2007年1月 8日 (月) 14時56分
私も大変興味深く拝見しました。 だけではつまらないので ^_^; 少し突っ込みますと、こういうアルゴリズムが「情報デザイン」だというのはちょっと納得行きませんけど… 「情報デザイン」というともう少し上のレベルの、情報をどう配置してどう見せるかとかそういう範囲という印象があります。 「画像処理」とかそういうものを内容とする科目ならこういうのはまさにぴったりだと思います。また、アルゴリズムの科目でも目に見えて分かるという点でよい題材だと思います(その場合はプログラムでこのような処理をさせるのだとは思いますが)。 私の勘違いでしたらぜひご指摘ください。
投稿: 久野 | 2007年1月 8日 (月) 19時43分
久野先生、コメントありがとうございます。
また、私などのブログをご覧になっていただけて光栄です。
「情報デザイン」という定義が一般化されていない(だろう)ので、イメージの不一致もあるかと思います。ご意見をいただき、なるほどと感じますので、勘違いとは思いません。ありがとうございます。
画像処理の裏側では微分や積分、マトリクス、正規分布など数学が大活躍しています。(ブログのネタに取っておいたのですが)例えば画像からエッジを検出するために、色調の急激な変化の瞬間を捉えますが、これは2次微分ですね。これらをどのように仕組んだら役に立つフィルタ(プログラムの一種)ができるか、ということも「デザイン」と考えています。
おそらく久野先生の仲間の方々が情報IIIAの中に盛り込む内容だと思いますが、学生にとっては取っつきやすい内容なので、一部は情報Iの中に組み込んでもよいかと思います。
以下は、先日、小原先生の記事のコメントにも書いた内容です。参考までに。
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「アーティスト」は自分自身のものを創造する。「デザイナー」は他の人々の問題を解決する。
これはよく使われる表現ですね。私は、データベースの扱いやシミュレーションなどの情報処理も、この「デザイン」の一種だと考えています。
私自身が「情報デザイン」の定義を理解していないのですが、情報A・CのプレゼンテーションやWEB・紙媒体での情報発信も、情報Bのモデル化とシミュレーション・アルゴリズムも総括して「情報デザイン」という中で体系化されていくと思っています。
投稿: VX | 2007年1月 8日 (月) 22時58分
こんにちは。五十嵐先生が挙げられているようなことは確かにどれも「デザイン」に違いありません。それらの多様な内容をどのように体系づけ、分類して、その中から何と何を選んで1つの科目として教えるのがよいかは悩ましいですね。大学だと科目数が多く細分化されているのに対し、高校だと1つの科目の枠で色々取り上げるとかの違いもありそうです。
投稿: 久野 | 2007年1月 9日 (火) 08時33分
「デザイン」と「情報デザイン」のニュアンスの違いは個人差もあるでしょうが、私も言い方を気をつけようと思いました。
本校は単位制総合学科なので、情報関係だけで7科目ぐらい取り、さらに検定を利用して個人的に勉強をするような生徒もいます。逆に言うと、このような生徒を教えられる技量が必要なわけで、そういう教員が採用されてくることを願っています。
投稿: VX | 2007年1月 9日 (火) 21時04分